購入した不動産を売却した際、利益が出た場合には「譲渡所得」として、利益分すなわち所得に対して所得税、住民税が課税されます。
不動産を売却して利益が出るのは、次のようなケースがあります。
- 親の自宅・土地を相続で取得した。
(昔に親が購入したときの取得費を引き継ぐため、売却すると売却金額の大半が利益になってしまう場合がある。) - 取得費が不明。
(あまりにも昔に買ったので、買った値段がわからない場合や売買契約書等の取得額を証明する物がないケースなど。)
- 過去に購入したマンションが値上がりしたので、売却した。
不動産の譲渡益のなかでも、特に居住用財産(住んでいる家や敷地)の売却に伴う譲渡益には、さまざまな税制優遇の仕組みがあります。譲渡益が出たときには、これらの税制優遇をうまく活用しましょう。
なお、住宅の買い換えで譲渡益が発生する場合、下記で紹介する3つの特例を利用すると、新居で「住宅ローン控除」は適用することができなくなるのが一般的ですので、注意しましょう。
詳しくは「新築マンションで住宅ローン控除を受けるための条件とは」をご覧ください。
3,000万円の特別控除の特例
居住用財産を売却して譲渡益が出た場合、所有期間にかかわらず、その譲渡所得から3,000万円を差し引くことができます。 つまり、3,000万円までの売却益は非課税になります。
●具体的な要件は税務署などにご確認ください。
居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年超の居住用の土地・建物を譲渡した場合には、「3,000万円の特別控除の特例」を適用したあと、さらに税率が次のように軽減されます。
課税長期譲渡所得金額 (譲渡所得から3,000万円を控除したのちの金額) |
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | |
6,000万円超の部分 | 15% | 5% |
●「6,000万円以下」の税率が軽減されます。
●なお、2037年までは復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されます。
●具体的な要件は税務署などにご確認ください。
特定の居住用財産を譲渡した場合の買い換えの特例
マイホームを売却して譲渡益が出た場合の特例には、次のようなものもあります。
「これまで住んでいたマイホームを売った(譲渡益が発生)価格よりも、新しく買ったマイホームの価格が高い場合には、所得税の課税が買い換えたマイホームを将来譲渡するときまで繰り延べられ、売った年の譲渡益はなかったものとみなして課税されません。反対に、売った価格よりも買った価格が低い場合には、その差額のみを譲渡益とみなして課税する」仕組みです。
この仕組みを活用すると、本来課税されるべき税金を繰り延べることができます。
「3,000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」を使ってもなお、譲渡益が多額にあるような場合には、その代わりにこの仕組みを使えば、売った年の税金がかからないようにすることができます。
ただし、この制度の適用を受けると、「3,000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」の適用を受けることはできません。したがって、譲渡所得の金額や所有期間などを考慮し、もっとも有利な選択ができるように検討する必要があります。
マイホームの買い換え時に上記の特例を利用する場合の注意点
住宅の買い換えなどで譲渡所得が発生した場合には、上記で紹介した3つの特例のいずれか1つでも利用すると、「住宅ローン控除」が利用できなくなるケースがあるので注意が必要です。
具体的には、購入した新居に入居する年とその前後2年ずつの5年の間(2020年4月以降に譲渡する場合は入居した年の前々年~入居後3年目までの6年間)に譲渡所得の各特例を受けると、住宅ローン控除が適用できなくなります。
マイホームの買い換えで譲渡所得が発生した場合、譲渡所得の特例を利用するよりも住宅ローン控除を利用するほうが有利なケースもあります。両方の制度をよく理解してから選択しましょう。
●具体的な要件は税務署などにご確認ください。
記載した制度は2022年4月1日現在の法令にもとづいています。
しかし、年度途中に税制が改正になったり、通達などにより詳細が決まるケースもありますのでご了承ください。