住宅を購入した人が払わなければならない費用の中に、固定資産税・都市計画税があります。
固定資産税・都市計画税は、マンションを購入してから所有している限り、ずっと支払い続ける必要があります。固定資産税・都市計画税がどれくらいかかるのかを知ることで、住宅ローンや管理費などと合わせて、マンションの維持費用がいくらかかるのかが分かり、購入後の資金計画を立てやすくなります。
このページでは、固定資産税・都市計画税の基本情報と計算方法についてまとめています。
目次
マンションの固定資産税・都市計画税に関する基本情報
固定資産税と都市計画税とは
はじめに、固定資産税と都市計画税について説明します。
固定資産税と都市計画税は、同時期に納税の通知が来るため、まとめて固定資産税と呼ばれることがあります。しかし、この2つは異なるものです。このページ内では固定資産税と都市計画税を合わせて固定資産税と呼ぶことはせず、それぞれ別々の名称で記載しています。
- 固定資産税:土地や建物などの固定資産を所有していると課される税金です。固定資産の所在地の市町村(東京都23区は都)が課税します。
- 都市計画税:原則として市街化区域にある土地や建物に対して課税されます。所有する固定資産が市街化区域外にある場合は、都市計画税はかかりません。
固定資産税・都市計画税の納税者
固定資産税・都市計画税を納めるのはマンションの所有者(毎年1月1日時点に所有者として固定資産課税台帳に登録されている人)です。たとえ所有しているマンションを貸していて自分が住んでいない場合でも、所有者が固定資産税・都市計画税を納める必要があります。
通知方法と支払いタイミング
固定資産税・都市計画税の納税通知書は、毎年4月ごろ、マンションの所有者宛てに送られます。納期は年4回(一般的に4月、7月、12月、2月)ですが、一括納入も可能です。
納期は全国一律ではなく、市町村毎に異なる場合があります。固定資産税・都市計画税の納期に関する詳しい情報は、お住まいの市町村のホームページなどで調べることができます。
マンションの固定資産税・都市計画税の計算方法を知ろう
固定資産税、都市計画税の計算方法について説明します。
固定資産税の計算方法
固定資産税の計算式は以下の通りです。
固定資産税評価額×税率1.4%(標準税率)
●税率は市町村により異なります。
都市計画税の計算方法
都市計画税の計算は以下の通りです。
固定資産税評価額×税率0.3%(上限)
●税率は市町村により異なります。
固定資産税評価額
上述の通り、固定資産税の計算にも都市計画税の計算にも「固定資産税評価額」という指標が使われます。固定資産税評価額とはどのようなものでしょうか。
固定資産税評価額とは、固定資産に対する評価額です。土地や家屋などをどのように評価するかを定めた「固定資産評価基準」に基づいて、各市町村(東京都23区は都)が決める評価額のことをいいます。土地の場合、公示地価(国が公表する土地の価格)の7割程度を目安に決められます。建物の場合は、再建築した場合にかかる金額から、経年劣化による減額を考慮して評価額を決定します。そのため、築年数などにより評価額が変わります。
固定資産評価額は3年ごとに更新されます。そのため、固定資産税・都市計画税の税額も3年ごとに変わる可能性があります。
先ほど述べたように、建物に対する固定資産評価額は、築年数などにより評価額が変わりますが、もう少し詳しく説明すると「その時点で建物を建てた場合いくらかかるのか」と「建物の経年劣化」によって決まります。経年劣化によって建物の価値が下がるので、築年数が経つにつれて固定資産評価額は下がるはずですが、建築資材が高騰した場合などには、評価額が下がらないこともあります。また、土地に対する固定資産評価額も、地価の変動により、上下する可能性があります。
マンションの固定資産税・都市計画税の軽減措置
住居用の土地や建物には、固定資産税・都市計画税の軽減措置が設けられています。
◆新築マンション(築5年まで)の軽減措置
新築から5年までのマンションでは、建物と土地の税額に軽減措置が設けられています。
固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|
建物 |
床面積120m2までの部分について、下記の一定期間は課税評価額が1/2に軽減される。 3階建て以上の耐火構造・準耐火構造住宅 (マンション):新築後 5年間 一般の住宅(上記以外):新築後3年間 ●居住部分の床面積が一戸につき50m2以上280m2以下であること |
軽減なし |
小規模住宅用地(一戸あたり200m2までの部分) | 土地の課税評価額が1/6に軽減 ●ただし、建物の床面積の10倍が限度 |
土地の課税評価額が1/3に軽減 |
一般用住宅地(一戸あたり200m2を越える部分) | 土地の課税評価額が1/3に軽減 ●ただし、建物の床面積の10倍が限度 |
土地の課税評価額が2/3に軽減 |
◆築6年以上のマンションの軽減措置
築6年以降のマンションでは、新築時に設けられていた建物の軽減措置がなくなります。
固定資産税 | 都市計画税 | |
---|---|---|
建物 | 軽減なし | 軽減なし |
小規模住宅用地(一戸あたり200m2までの部分) | 土地の課税評価額が1/6に軽減 ●ただし、建物の床面積の10倍が限度 |
土地の課税評価額が1/3に軽減 |
一般用住宅地(一戸あたり200m2を越える部分) | 土地の課税評価額が1/3に軽減 ●ただし、建物の床面積の10倍が限度 |
土地の課税評価額が2/3に軽減 |
●「認定長期優良住宅」に認定されたマンションの場合には、7年間軽減措置が適用されます。
◆マンションと一戸建ての軽減措置の違い
マンション(3階建て以上の耐火構造・準耐火構造住宅)と一戸建てでは、新築時に適応される軽減措置の適応期間が異なります。
- 新築マンションの建物の軽減措置期間 5年間
- 一戸建ての軽減措置期間 3年間
マンションの固定資産税・都市計画税を実際に計算してみよう
固定資産税、都市計画税を実際に計算して確認してみましょう。
新築マンションの場合
専有面積90m2、土地の固定資産税評価額が1,500万円、建物の固定資産税評価額が1,000万円の新築マンションの固定資産税、都市計画税を計算してみます。
固定資産税:
土地:1,500万円×1/6×1.4%=35,000円
建物:1,000万円×1/2×1.4%=70,000円
合計:105,000円
●税率は市町村により異なります。
都市計画税:
土地:1,500万円×1/3×0.3%=15,000円
建物:1,000万円×0.3%=30,000円
合計:45,000円
●税率は市町村により異なります。
築6年のマンションの場合
同様に、専有面積90m2、土地の固定資産税評価額が1,500万円の条件で計算します。ただし、建物の固定資産税評価額は、経年による減価を考慮して833万円とします。(東京法務局「経年原価補正率表(平成30年度)」の6年後の非木造建物減価補正率0.833をもとに算出)
固定資産税:
土地:1,500万円×1/6×1.4%=35,000円
建物:833万円×1.4%=116,620円
合計:151,620円
●税率は市町村により異なります。
都市計画税:
土地:1,500万円×1/3×0.3%=15,000円
建物:833万円×0.3%=24,990円
合計:39,990円
●税率は市町村により異なります。
上記の例のように、築6年目のマンションは5年間の固定資産税の軽減措置がなくなるので、新築~築5年目までと比べて固定資産税が増えるのが一般的です。そのため、新築や築浅のマンションを購入する場合には、途中から固定資産税は増えることに注意しておく必要があります。
●表示内容は2022年4月1日の法令に基づいています。
マンションの固定資産税・都市計画税に関する注意点
マンションの固定資産税について注意する点について確認してみましょう。
納税通知書が届いたら確認したいチェックポイント
納税通知書が届いたら、念のために以下を確認しておきましょう。もし、疑問点があれば管轄の窓口に問い合わせてみましょう。
納税通知書をチェックするときに、最も注意する点は、軽減措置についてです。
◆土地の使われ方
固定資産税納税通知書に同封される「課税明細書」には、「地目」という欄があります。これは、田、畑、宅地など、登記簿謄本に記載されているその土地の使われ方のことです。地目によって固定資産税・都市計画税の税額が異なるので、現在の土地の使われ方と地目にズレがないか確認することが大切です。
◆土地の減額適用
小規模住宅用地(200m2以下の住宅用地、または、200m2を超える場合住宅一戸あたり200m2までの土地)と一般用住宅地(一戸あたり200m2を超える土地の部分)では、軽減措置が異なります。土地の面積を確認して、住宅用地の軽減措置の適用が正しいかどうかチェックしてください。
◆家屋の減額適用
マンションの場合は築5年(一戸建ては3年)まで、新築マンションとして、建物の軽減措置が受けられます。また、認定長期優良住宅に認定されているマンションでは築7年まで軽減措置期間が延長されます。そのため、新築住宅や認定長期優良住宅など、住宅の特徴による軽減措置の適用が正しいかどうか確認してください。
同じ物件で専有面積も変わらないなら固定資産税は同じになる
固定資産税・都市計画税は専有面積で決まります。そのため、同一物件で、専有面積が同じあれば、1階でも10階でも、間取りや方角に関わらず固定資産税・都市計画税は同じ金額になります。
ただし、下層階と上層階の市場価格が大きく乖離するタワーマンションの場合、納税者の公平さを保つため税制の見直しが図られました。平成29年4月以降に購入したタワーマンションには、階によって固定資産税、及び都市計画税に補正がかかっています。
税金も含めて資金計画をたてる
マンションを保有していることでかかるランニングコストは、管理費、修繕積立金、駐車場代に加えて、固定資産税・都市計画税があげられます。
マンションを購入するときには、住宅ローンの返済額は考慮しても、これらのランニングコストのことを忘れがちです。固定資産税・都市計画税も忘れずに、購入後の資金計画を立てましょう。
マンションの固定資産税・都市計画税に関する情報のまとめ
固定資産税・都市計画税は計算方法が複雑なので、市町村が課税額の計算ミスを起こすこともあります。通知がきたら内容をチェックしてみましょう。
固定資産税、都市計画税は、不動産を保有している限りかかります。マンション購入後の資金計画をたてる際に、ここで説明した計算方法や軽減措置について確認しておくと役に立つでしょう。