文部科学省の予測によると、東京湾北部を震源とするM7クラスの地震が(2014年1月から)30年以内に発生する確率は、70%程度とされています。また、駿河湾から四国沖に位置する南海トラフを震源としたM8~M9クラスの地震が起きる確率は、30年以内に70%~80%と予測されています(※1)。
※1. 文部科学省研究開発局の地震調査研究推進本部事務局サイトより
実は、世界で発生するM6以上の地震の2割もの地震は日本周辺で発生しており、日本は世界有数の地震国です。地震は日本に住むかぎり避けることのできない自然災害といえます。避けられないものに対して、いたずらに不安を感じるよりも、いかに備えるのかを考えることが大切です。
そこで今回は、マンション防災の基本ともいえる地震への備えについて説明します。
過去の大地震の教訓からマンションの防災を学ぶ
東日本の広範囲に深刻な被害をもたらした東日本大震災ですが、倒壊など大破したマンションはゼロという記録が残っています(※2)。また、阪神・淡路大震災では、約9割のマンションが「軽微な被害・無被害」でした。このことから、一般住宅と比較してマンションは強固で、地震の揺れに強いといえます。しかしながら阪神・淡路大震災では、地震発生が早朝だったこともあり、多くの人が就寝中で、マンションでも家具の転倒による死傷者が多く出てしまいました。
また、建物自体が損壊しなくとも、電気・ガス・水道が止まってしまい、マンションで生活できなくなった人が多くいました。ライフラインの停止によって避難生活を送った人は、東日本大震災でマンションに住む人の48%、阪神・淡路大震災では約70%にも及びました(※3)。
過去の大地震の教訓からわかるマンションの防災対策のポイントは以下の2点といえるでしょう。
- 大地震発生時には、家具の転倒による怪我を防がなくてはならない
- 大地震後のライフラインの停止に備えなくてはならない
※2・3. 東京都中央区総務部防災課 高層住宅防災対策パンフレット「備えて安心!マンション防災」P22・23より
マンション防災の具体策
ここからは、1章でまとめた防犯対策のポイントを含め、具体的なマンションでの防災対策について説明します。
地震が起きたときに身の安全を確保するための対策
大きな地震が起きたときに、特に気をつける必要があるのが「家具の転倒」と「ガラスの飛散」です。身の安全を確保するために、家具類の転倒防止対策、ガラス飛散防止対策を行いましょう。また、揺れが収まったあとにも、「火の確認をする」「避難口を確保する」など、やるべきことがあります。普段からもしものことを想定して、いざという時には落ち着いて行動できるようにしましょう。
地震が起こる前の対策
- 固定金具を設置して、家具の転倒を防止する
- テレビなどの大型家電はできるだけ低い位置に置く
- 観音開きの扉にはストッパーをつける
- もし家具が転倒しても、部屋の出入り口をふさがない配置にする
- 倒れる可能性がある家具の近くで寝ない
- 食器棚などのガラス戸には飛散防止フィルムを貼る
- カーテンも窓ガラスの飛散防止になるので利用する
- スリッパなどの履物を寝る場所の近くに置く
地震が起きたときの対応
- 「身の安全の確保」を最優先に行動する
- 背の高い家具や窓ガラスから離れる
- テーブルなど頑丈な家具の下に入り怪我を防ぐ
- エレベーターに乗っていて大きな揺れを感じた場合、行き先階のボタンをすべて押し、停止したら速やかに降りる
- エレベーター内に閉じ込められたらむやみに動かず「非常電話」のボタンを押し続ける
地震の揺れが収まった後の対応
- 火の確認を行う
- 出入り口を確保する
- 家族の安全を確認する
- 部屋の状況を確認する
- ライフラインの状況を確認する
- (地震による停電時でも使える)携帯ラジオ、スマホなどで正しい情報を収集する
家庭で取り組む地震への備え
家庭で取り組むことのできる地震への備えとは、「家具などの転倒防止・ガラスの飛散防止」と「ライフラインの停止に備えた備蓄」です。「家具などの転倒防止・ガラスの飛散防止」については前項で説明したので、ここでは「ライフラインの停止に備えた備蓄」について解説します。
東日本大震災では、3日以内に電気の約7割が、1週間以内に水道の約7割が復旧しました。ガスは少し時間がかかりましたが、1ヶ月以内に約6割が復旧しました。水道が復旧するまで避難を続けた人が多かったことから、ライフライン停止時に生活用水をいかに確保するかが、地震の備えとして特に重要だといえるでしょう。
ライフラインの停止に備えて、以下のものを家庭で備えておくと安心です。
- 1人1日3リットル×人数分の飲料水を1週間分
- 1人1日7~8枚×人数分の簡易トイレを1週間分
(飲料水、簡易トイレの置き場所がない場合でも、最低3日分は用意) - 水筒
- 懐中電灯、携帯ラジオ、電池(手動携帯充電器があると便利です)
- 卓上カセットコンロ、ガスボンベ
- 固形燃料
また、家族の間で、地震が起きたときの安否確認の方法をあらかじめ決めておくと安心です。大地震の後には、固定電話、携帯電話が通信不能になる場合があります。そのような状況に備えて、複数の連絡方法を決めておきましょう。災害時に役に立つ連絡方法は、以下のものがあります。
- 災害用伝言ダイヤル171(災害時にNTTが開設する伝言ダイヤル)
- 災害用伝言板(災害時に各携帯電話会社が開設する電子掲示板)
- Facebook、TwitterなどのSNS
マンション全体で取り組む地震への備え
家庭だけでなく、自治会や管理組合が中心となり、マンション全体でも防災に取り組む必要があります。マンション全体では、ジャッキ、バール、ハンマー、ロープなど家庭では準備できない物を備蓄することになります。いざというときに使い方がわからないことがないように、備蓄品の取り扱い方法を知っておきましょう。そのために定期的に防災訓練を実施することが大切です。
また、同じ建物の中で複数の世帯が生活しているマンションでは、いざというときに複数の人が助け合えるように、防災組織をつくることが重要です。自治会や管理組合が中心となり、世帯数や世帯のライフステージなどマンションの状況に合った防災組織を立ち上げましょう。
さらに、お祭りやマンションのイベントを開催し、災害が起こる前からマンションに住む方々が、お互いに顔の見える関係をつくっておくことも重要です。
ライオンズマンションの防災対策
大きな地震に備えるために、ライオンズマンションでは、以下のような取り組みを行っています。
SONA-L SYSTEM(ソナエル システム)
SONA-L SYSTEM(ソナエル システム)は「災害発生後の生活持続」を実現するマンションの新しい防災システムです。太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、停電時でもエレベーター・給水ポンプ等に電力を送ることで、生活を持続するためのライフラインを確保します。さらに平常時には、太陽光発電により電力を共用部に供給し、維持管理費の削減にも貢献します。
防災備蓄倉庫
ライオンズマンションでは、非常時に使用する備蓄品をストックするための防災備蓄倉庫を共有部に設置しています。
管理会社の支援体制
東日本大震災の際、大京では、グループ会社の社員を東北に集結させ、復旧活動を行いました。現地に対策本部を置き、ライオンズマションに住んでいる方々が一刻も早く通常の生活を取り戻せるように支援させていただきました。また、平常時においても、防災備品を使用した防災訓練などの支援を行うなど、災害対策のお手伝いを行っています。
今回は、マンションで備えておくべき防災対策についてお伝えしました。近い将来、大都市圏でも地震が起こる可能性は高く、今のうちから対策を練っておくことは、誰にとっても重要なことです。今回お伝えした防災に関する知識を活かして、もしもに備えましょう。また、マンションの購入をお考えの方は、防災についても注目してみてくださいね。