RELATION WALL

CONCEPT

隔てる壁から、
繋がる壁へ。

家族の形やライフスタイルが多様化する時代に、
間取りはもっと自由になれないか。

『Relation Wall』
それは、自由に形を変え、
人の関係性をデザインする壁。
離れていても、気配を感じる。
プライベートを保ちながら、人を迎える。
「隔てる」と「つなぐ」。
その両立が、家族と社会をゆるやかに結ぶ。

家族の関係性を、もっと豊かにするために。
住まいから、価値ある人生を叶えるために。
壁は、しなやかに動きはじめます。

RELATION WALL
CONCEPT MOVIE

FUNCTION

住まいをLDKから自由にする
可動式の壁とシステム天井

これまでの住宅では
あまり機能を持たなかった天井に、
意匠と構造を兼ねた
モジュールシステムを組み込むことで、
可変的で自由な間取りを実現します。

可動

天井に円形レールを巡らせ、部屋中を壁が自由に移動できるように。
壁は木材とメッシュ生地で、柔らかさと存在感を感じさせます。

調光

伸縮可能な壁を広げると布地が光を透過させ、
縮めることでルーバーが集まり、光を遮ることが可能に。

遮音

音のエネルギーを吸収する特殊素材の開発を構想中。
リモートワーク時の声や掃除機音などの生活音を壁一枚で遮断します。

USE CASE

壁の配置によって様々な形で
人間関係をつなぐ

ときに自分だけのプライベートの空間になったり、
ときに気軽に人を招く場所になる、そんな家がきっと豊かな人間関係を育みます。
ワンルームを自由に動く壁は、一人の時間が必要な時には空間を区切り、家族や来客と
空間を共有したい時には畳まれます。

開放
集中
交流

家族で時間を共有したいときに。
すべての壁が折り畳まれ、広々としたワンルーム空間に。

リモートワークや睡眠時に。ブースごとに場を囲うことで、
光や音を遮断した個々のプライベート空間に。

来客時に。寝室などに簡単に目隠しをし、
プライベートとパブリックゾーンを切り分けた空間に。

INTERVIEW

関係性を断つのではなく、関係性を生む「新しい壁」への挑戦
─建築家・永山祐子氏

夫婦の暮らし、そして社会とのつながり方が多様化する現代。住宅もまた、その変化に柔軟に対応していくことが求められています。本プロジェクトに携わった建築家の永山祐子氏にそのデザイン思想と、未来の住まいが持つべき役割について話を伺った。

永山祐子氏

永山祐子氏インタビュー

「関係性を断つ壁」から「関係性を生む壁」へ

これまで「関係性を断つ」ものであった壁が、関係性を「生む」ものに変わるというコンセプトに、当初どのような印象を持たれましたか?

正直、最初は戸惑いました。壁は、空間を仕切り「関係性を断つ」イメージが強いからです。しかし、その矛盾した言葉の組み合わせに面白さを感じました。矛盾するものがぶつかることで、新しいものが生まれることはよくあります。そこで、私なりに「リレーション」とは何かを深く考え直しました。単に夫婦二人の関係性だけでなく、社会全体を含めた中で夫婦がどうあるべきかという、もう少し広い視点で捉えました。夫婦の関係を起点に、その先に広がるコミュニティー、例えば友人や知人、そして地域社会といった、より大きな視野の「つながり」をこの壁で生み出したいと考えました。

従来のマンションには「LDK」という機能的な分断が見られます。現代の暮らしにおいて、これはどのような課題を生み出しているのでしょうか?

従来のマンションは、リビング、ダイニング、キッチン、そしてベッドルームといった機能ごとに部屋の役割が明確に分かれています。しかし、今のライフスタイルは、それらがもっと融合していて、家で仕事をしたり、人を招いたりすることも増えてきています。限られた空間の中で「どこに人を呼んだらいいのか」といった、今の社会の流れとズレている部分があると感じています。そのギャップをどう埋め、柔軟性を生み出すかが、私たち設計者への課題だと考えています。

「リレーションウォール」のデザインに込めた提案

「リレーションウォール」は、その課題を解決するのでしょうか?

従来の壁は、お互いの気配を完全に遮断してしまいます。隣にいても、いるかいないか分からないくらいに空間が分断されてしまう。しかし、この「リレーションウォール」は、お互いの気配を感じられるように、でも会話や音は聞こえない、という絶妙な「良い距離感」を生み出せるんです。置き方を変えたり、伸縮させたりすることで、壁の透過度を調整することもできます。この機能によって、夫婦の距離感を繊細にチューニングし、その時々に最適な関係性を築くことができるようになります。
最近は、夫婦二人の生活だけでなく、それぞれの友人を招いたり、友人同士のコミュニティーが広がっていくことが多くなっています。結婚によってうまれる豊かさの中には、お互いの人間関係を共有することで広がるものがあると思うんです。この壁が、そうした関係性を広げるきっかけになればいいなと思っています。

開発する中でこだわった点や苦労した点はありますか?

今回は、曲線的な柔らかいラインを大切に考えていました。そして、天井の機構をどうするかという点も挑戦でした。電動で動かすことを目指しましたが、そのためには「どのくらいの重さまで動かせるのか」や「スムーズな動かし方」といった部分の開発が大変でした。技術的な課題とデザイン的な要求をいかにして高いレベルで融合させるか、試行錯誤の連続でした。

住宅を、社会とのつながりを生む拠点に

永山さんにとって、この「リレーションウォール」を一言で表すとしたら、どんな存在でしょうか?

それは、「夫婦の関係性を超えて、社会とつながるための壁」だと言えると思います。住宅が持つ機能は、もはや「住んで、食べて、寝る」だけではありません。この壁が普及することで、住宅は仕事の場となり、交流の場となり、コミュニティーを豊かにするでしょう。大京が示す「リレーションウォール」は、壁という固定概念を打ち破り、私たちの暮らし、そして社会の関係性を根本から変えていく可能性を秘めています。

石川善樹氏に聞く、新時代の住宅が持つべき機能

内閣府の世論調査によれば、「家庭の生活が良くなる」と答える人の割合は50年以上減少し続けている。予防医学研究者でWell-being研究の第一人者である石川善樹氏は、その根源を「住空間の進化」に見出している。個人のWell-beingを追求するあまり、見失ってしまった家族のあり方。そして、その希望を取り戻すための新たな住まいの形について、氏に話を伺った。

石川善樹氏

石川善樹氏インタビュー

「幸せな家庭」の終焉:50年続く下降トレンドの理由

石川さんは、内閣府の世論調査の結果に強い危機感を持たれているそうですね。

はい。この調査では、「家庭の生活が今後良くなるか」という質問に対し、ポジティブに答える人の割合が、過去50年以上にわたって下がり続けています。驚くべきことに、好景気だったバブル期ですら、このトレンドは変わらなかった。これは、単なる経済的な要因だけでなく、家庭というコミュニティー自体が、人々に希望を与えられなくなっているという、より深い構造的な問題を示唆しています。この問題の根源には、住空間が「個人主義」を満たす方向へ過度に進化してしまったことが大きく関わっていると考えています。

「個人主義」への進化とは、具体的にどういうことでしょうか?

象徴的なのが、大正時代の和洋折衷の「文化住宅」の廊下です。それまでの和の住宅は、襖や障子で仕切られた、ゆるやかにつながる空間でした。しかし、「廊下」という物理的な分断によって、各部屋は独立した「個」の空間となりました。
人との関係を切ることがWell-beingにつながった時代もありました。江戸の長屋のようなプライバシーがないところで暮らしていた時代は、人と人を空間的に切り離すことは効果的でした。団地も、二世帯三世帯住宅からの分断です。しかし、狭い団地にも客間があり、切り離しながらも外に開く工夫があった。でも、この50年のデータは家庭がおかれている厳しい現実を語っています。分断して関係を切り過ぎたものを、空間でどう修復できるか。「リレーションウォール」はその課題に対する提案だと感じています。

1968年 → 2022年 今後家庭の生活が「良くなる」と思っている割合

家は「多重人格」が同居する場所に

現代の個室にはどのような問題があるのでしょうか?

人間には、職場で「仕事をする自分」、友達といるときの「プライベートな自分」、そして家にいるときの「素の自分」など、複数の顔があります。心理学で「健全な多重人格」と呼び、多様な環境に適応するために必要なことだと考えられています。
しかし、コロナ禍以降、これらの「多重人格」が、「家」という場所で同居することになりました。家が「素の自分」しか許容しない場だと、他の人格は抑圧され、息苦しさを感じます。たとえば、「家ではダラけていたい」という役割が固定化されると、パートナーから「仕事のときと態度が違う」と不満を言われ、摩擦が生じます。この役割の固定化が、家を居心地の悪い場所にし、外に安らぎを求める原因になります。
家は個人に内在する「多重人格」を許容する場所になる必要があります。物理的な距離だけでなく、心理的な距離感も調整できる住空間が求められるのです。例えば、今回の「リレーションウォール」のように、壁の開閉や透明度を自在に変えられる可変的な空間は、この課題を解決する可能性を秘めていると思います。

再接続される空間と関係性──多面的な自分を許容する家へ

「リレーションウォール」の「空間を再接続する」という機能が、具体的にどのように関係性を豊かにするのでしょうか?

完全に閉じられた空間は、相手の存在を遮断してしまいます。しかし、この壁は透明度を調整したり、一部だけ開けたりと、「グラデーション」を設けることができます。これは「この人、実はこんな一面もあったんだ」という、今まで知らなかったパートナーの多面性を知るきっかけを与えます。

家庭以外の第三者とつながることの意味についてもお伺いしたいです

夫婦の問題は、夫婦だけで解決できません。密室で当事者だけだと「相手が悪い。私が可哀想。」という状況に陥ってしまう。江戸の長屋で、大家さんがトラブルの仲裁に入ったように、第三者の視点が重要です。第三者の目が、夫婦関係の感情的なもつれを緩和する効果があります。

新しい住まいが、新しい「家庭のあり方」を作る

最後に、未来の住空間について、どのような展望をお持ちですか?

時代は巡ります。「スタンダード」が求められる時期が続くと、「カウンターカルチャー」がもてはやされる時期が到来し、次に「多様性」がうたわれる時期へと移行していきます。そして、多様性が極まると、時代は「新たなスタンダード」を必要としてきます。家に関して現代は、ようやく「多様性」に対応する段階に入ったところ。今回の「リレーションウォール」は、その時代のニーズに合ったちょうどよい提案だと思います。

PROJECT MEMBER

「Relation Wall」
プロジェクト参画メンバー

EXPERTS

  • Yuko Nagayama

    建築家
    永山祐子建築設計代表

  • Yoshiki Ishikawa

    予防医学研究者
    医学博士

  • Ryosuke Sakaki

    Creative Director
    Future Vision Studio代表

DAIKYO

  • Airi Takahashi

    株式会社 大京

  • Miki Yoshioka

    株式会社 大京

  • Koji Saito

    株式会社 大京

  • Shunichi Ichikawa

    株式会社 大京

  • Miki Taguchi

    株式会社 大京

CONTACT

本プロジェクトおよびサイトに関するお問い合わせは下記のアドレスまで
ご連絡ください。