住宅を購入する際、マンションを選ぶのか、一戸建てを選ぶのかは、その人がもつ価値観や好み、ライフスタイルによって意見が分かれるところです。どちらがいいかは一概にはいえませんが、それぞれの特徴を知れば、どちらが自分に合っているのかわかるようになります。
ここでは、マンションと一戸建ての比較ポイントごとの特徴をまとめてみます。

「マンション」と「一戸建て」建物の違い

部屋の広さや間取りなど、マンションと一戸建てのそれぞれの特徴についてみていきましょう。

広さ

2021年度に首都圏で発売されたマンションの一戸あたりの平均専有面積は59.3m2。一方、同年に首都圏で発売された建売一戸建ての平均建物面積は98.0m2です。
(出所:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」より、「フラット35(買取型)」又は「フラット35(保証型)」を利用した人のデータ)
マンションには、コンパクトマンションなど、面積の狭いものも含まれる一方で、一戸建てのほとんどは、家族で住むことを前提にしています。そのため単純比較は難しいですが、一般的にマンションよりも一戸建てのほうが広いといえるでしょう。

間取り

ファミリー向けのマンションでは、大きなLDKのある間取りが中心です。ワンフロアにLDKとその他の部屋があるため、部屋間の移動がしやすく、いつでも家族がそばにいる感覚を持ちやすいといえます。
一方、一戸建ては、LDKとその他の部屋のフロアが分かれているなど、プライバシーを確保しやすい間取りが特徴です。

設備・施設

住居に設置できる設備に関して、マンションと一戸建てに大きな差はありません。しかし、マンションには共用施設があるので、その点では大きく異なります。
24時間ゴミ出し可能な収集所、キッズルームなど、利便性の高い共用施設があるマンションもあります。また、この施設の管理は、管理会社に任せることが可能です。
一方、一戸建てでは、屋根裏収納・床下収納など、マンションよりも収納スペースが多く取れる傾向にあります。

通風・採光

風通しや採光については、窓の多い一戸建てのほうが有利なことが多いようです。しかし、マンションも上階であれば、陽の光をさえぎるものがないので、南向き以外の部屋でも明るい場合があります。
また、マンションの方が、気密性が高く断熱性に優れているので、冷暖房が効きやすいという利点もあります。

将来の増改築

リフォームや増改築の自由度は、一戸建てに軍配があがります。室内でも外装でも、ほぼ自分の好きな通り、自由に改築することができます。
一方、マンションは、玄関ドアは共用部分にあたり、自分の好きなように変えることができなかったり、また専有部分である室内をリフォームする場合でも、管理組合の承認が必要になるなど、マンションとしてのルールがあるのが一般的です。

「マンション」と「一戸建て」暮らしの違い

マンションと一戸建てでは、それぞれ建物に特徴があるため、そこでの暮らし方も異なるものになります。ここでは暮らしの違いについてみていきましょう。

防犯性(セキュリティ)

マンションのセキュリティ対策には、オートロック、防犯カメラ、管理人室などがあります。一戸建てでもホームセキュリティが普及していますが、マンションの場合、何重ものセキュリティ対策がとられていることが多いです。特に近年では、オートロックや、キーを解除しないと利用できないエレベーター、さらにピッキングやこじ開けに強い玄関ドアなど、セキュリティを強化しているマンションもあります。このように防犯性に関しては、マンションの方が優れているといえるでしょう。

最寄り駅からの距離

2022年12月に発売された首都圏のマンションにおける最寄り駅からの平均所要時間は7.5分と、一般的にマンションは駅の近くに立地しているケースが多く、車がなくても生活に困らないことがほとんどです。
(出所:株式会社不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2022年12月」)
一方で、一戸建ては駅からやや離れた閑静な環境に建てられていることが多いようです。

コミュニティ

マンションでの暮らしは、ひとつの建物内に複数の世帯が住む、近隣世帯との共同生活です。隣戸がすぐ近くにあることから、一戸建てよりも近所に対する配慮が必要になります。また、管理組合などのコミュニティに参加する必要もあります。
積極的に近所付き合いをすることで、留守中の家のことを気に掛けてくれる、短い時間なら子供を預かってくれるなど、マンションに住む他の方と助け合いながら生活できるというメリットもあります。

一方、一戸建ては独立性が高く、プライバシー面で優位性があります。管理組合などの参加義務もありませんので、近所付き合いを苦手に感じる人にとっては、マンションよりも一戸建ての方が向いているといえるかもしれませんね。

防音

音の問題について、マンションに住む場合は、上下階や隣戸に迷惑にならないような配慮をする必要があります。
ただ、最近の分譲マンションの防音・遮音性能は進化しており、2重床・2重天井の物件や、床や壁などのコンクリートが厚い物件が多くなっているので、昔のように隣の室内の話し声が聞こえるなどということはほとんどなくなりました。しかし、まったく配慮しなくてよいというわけにはいきません。

その点、一戸建ては独立性が高いため、音の問題ではマンションよりもメリットがあるといえるでしょう。
ただし、一戸建てでも隣の家が近接していたりなど、生活音が聞こえ、配慮が必要な場合もあります。

防災性

一戸建てとマンションのその他の大きな違いとして、マンションは一戸建てにくらべて火災時の安全性が格段に高いという利点があります。
マンションの壁は、コンクリート(不燃性)でできているため木造の一戸建てとくらべて延焼の危険性がほとんどありません。
そのため、マンションは一戸建てよりも火災などのリスクが低いことなどから、火災保険の保険料も比較的安くなっています。

また、東日本大震災において倒壊など大破したマンションはゼロという記録が残っていることから、マンションは、地震においても非常に強いということがわかります。

動線

ほどんどのマンションは、部屋の中に階段がなくワンフロアで暮らすことができます。そのため、階段の上り下りをする必要がないなど、家事動線がスムーズで効率よく家事をこなすことができます。
また、ラクに部屋の行き来ができるので、ケガをしたときや年をとって体が不自由になったとき、妊娠しておなかが大きいときなどにも安心です。
マンションでは、部屋のあるフロアまではエレベーターがあり、家の中でもワンフロアなので体への負担が少ない暮らしができます。

一戸建てでは、リビングなどの生活スペースと、親の寝室や子供部屋などの個室が違う階に離れていることが多く、動線も交わらないため、家族間でもプライバシーが保たれた生活ができるでしょう。

「マンション」と「一戸建て」費用の違い

ここでは、マンションと一戸建てにかかる費用の違いについてまとめてみます。

物件価格

2021年度に発売された首都圏のマンションの平均価格は4,913万円、一方で、建売一戸建ての平均価格は4,133万円です。物件価格は、立地条件や床面積により大きく変動しますが、平均価格で比較すると、マンションの方が約780万円ほど上回っています。
(出所:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査」より、「フラット35(買取型)」又は「フラット35(保証型)」を利用した人のデータ)

以前は同じ条件であれば、マンションの方が割安といわれていましたが、最近では、タワーマンションなど高付加価値マンションが増えてきた結果、マンションの価格が上回る傾向にあるようです。

管理費用

マンションは、管理費や修繕積立金を負担することになりますが、共用部分の清掃などの管理や、定期的な大規模修繕を管理会社に委託することができます。
一戸建ては、マンションで必要になる管理費や修繕積立金、駐車場代などはかかりませんが、家の周りは自分で清掃しなくてはいけませんし、修繕費は自分で貯めておく必要があります。

税金

マンションでも一戸建てでも、不動産を所有しているだけで固定資産税がかかります。固定資産税は、土地と建物の両方に課せられます。

固定資産税は、以下の計算で算出されます。

土地の固定資産税=土地評価額×1.4%×1/6
建物の固定資産税=建物評価額×1.4%

固定資産税=土地の固定資産税+建物の固定資産税

●住宅用の土地の固定資産税には、200m2までは1/6(小規模修宅用地)、200m2超(一般住宅用地)は1/3に減税される優遇措置があるので、土地の評価額の割合が多いほうが、固定資産税全体が安くなりやすい。
詳しくはマンション購入後にかかる固定資産税・都市計画税はどれくらい?をご覧ください。

マンションと一戸建てでは、土地と建物の評価額の割合が異なります。土地の評価額の割合が少ないマンションでは、固定資産税が高くなる傾向にあります。

マンション 土地の評価額少なく、建物評価額多い → 固定資産税が高くなる
一戸建て 土地の評価額多く、建物評価額少ない → 固定資産税が安くなる

●ただし、建物部分についても以下の優遇措置があるため、この期間に限れば、マンションの固定資産税の方が安くなることもあります。

●令和6年3月31日までに新築された床面積要件をみたす住宅のうち120m2を限度に、マンションは新築から最長5年間(長期優良住宅は7年間)、戸建ては新築から最長3年間(長期優良住宅は5年間)、建物の固定資産税の1/2を減額。
詳しくはマンション購入後にかかる固定資産税・都市計画税はどれくらい?マンションの不動産取得税の計算方法と軽減措置の手続きをご覧ください。

なお、地域によっては固定資産税以外に都市計画税が土地と建物にそれぞれかかる場合があります。課税の有無や税率は市町村によって異なりますが、制限税率は0.3%です。軽減措置なども地域によって異なるため、お住まいの市町村に確認してください。

資産価値

不動産の資産価値は、土地と建物の価値の合計で計算されます。
このうち土地は、経年劣化することがないので、資産価値が大きく減ることはありません。しかし、建物は経年劣化するため、時間とともに資産価値が目減りしてしまうことを考慮する必要があります。

マンションの特徴 一戸建ての特徴

最後に、マンションと一戸建ての特徴について、これまでのことからまとめてみましょう。

マンション 一戸建て
間取りも広さもさまざま、部屋間の移動がしやすい 広さ、間取り 一般的にはマンションより広く、プライバシーを確保しやすい
リフォームするには管理組合の承認が必要になる 将来の増改築 ほぼ自由に改築することができる
オートロック、防犯カメラ、管理人室など充実している 防犯性 ホームセキュリティは普及しているが、マンションに比べれば劣る
駅の近くに多い 立地 駅から離れた閑静な環境に多い
近所世帯とのつながりが強い コミュニティ プライバシーが確保され独立性が高い
上下階や隣戸には配慮が必要 防音 独立性は高いが、家が近接している場合などは配慮が必要
火災・地震などに強く、また防災備蓄倉庫など防災に対する備えが整っていることが多い 防災 一戸建ては木造の場合が多く、マンションに比べると延焼の危険が高い
家事動線がスムーズで効率よく家事をこなすことができ、またワンフロアで暮らせるため、体への負担も少ない 動線 部屋が独立しているため、家族間でもプライバシーを保つことができる

今回比較したマンションと一戸建ての違いは、一般的にいえるものです。実際は、物件ごとに異なるので、購入を検討する場合は、現地の状況を優先して考慮する必要があります。また、マンションに住むか、一戸建てに住むかを決めるには、今後どのような暮らしをしたいのかなどライフプランについて、ある程度考えておくとよいでしょう。