転勤や、子どもが生まれて今のマンションが手狭になることなどを理由に住み替えを考えるとき、これまで住んでいるマンションはどうすればよいのでしょう。

選択肢としては、「売る」と「貸す」の2つが考えられます。
いずれにしても、まず最初に、家族の将来の住まいに関する考え方を整理する必要があります。その上で、「考えていることが実現できるか?」を検討します。

これまでと違う場所に新しいマイホームを購入したい場合には、今のマンションを「売る」、「貸す」の2つの選択肢を検討することになります。一戸建てへの住み替えや、別の地域のマンションに住み替えるような場合です。

将来は今のマンションに戻ってきて暮らしたい場合、今のマンションは一時的に「貸す」ことになります。転勤で引っ越しをせざるを得ない場合や、子どもが自立するまでの期間に家族の人数に合わせた住まいで過ごしたい場合などです。新しい住まいには期間限定で暮らすことになるので、基本的には賃貸住宅での生活になるでしょう。

今のマンションを「売る」場合と「貸す」場合の経済的なメリット・デメリットを考えてみましょう。

「売る」場合のおもなメリット・デメリット

メリット

  • 購入価格よりも高い値段で売れると利益が出て、その利益には税制優遇を受けられる。(「売却時の税金制度:譲渡所得」)
  • 売却金額で、今のマンションの住宅ローンが完済できれば、新しい住宅を購入する場合、住宅ローンを組みやすい。
  • 「貸す」場合に今のマンションにかかる固定資産税や火災保険料、管理費・修繕積立金などの支出をしなくてもよくなる。

デメリット

  • 購入価格よりも低い値段でしか売れない場合は損失が出る。
  • 売却に伴うコスト(仲介手数料など)がかかる。
  • 売却金額で住宅ローンをすべて返済できない場合は、借金だけが残る。
  • 今のマンションの住宅ローンが残ると、新しい住宅を購入する場合、「返済負担率」の関係で住宅ローンが組みにくい。(「いまの年収から計算する、マンションの購入価格は?」)

「貸す」場合のおもなメリット・デメリット

メリット

  • 賃貸収入が今のマンションのローン返済額やコストを上回る場合には、給与収入などとは別の安定的な収入を得ることができる。
  • 礼金などの収入を得ることができる。
  • 今のマンションのローン返済を完済したあとは、賃貸収入の大半が所得となり、老後の生活資金などに使えるだけでなく、収益物件が資産として残る。
  • 減価償却費(コスト)などの計上ができるため、場合によっては、現在の給与所得など、他の所得を圧縮することができ、節税につながる。

デメリット

  • 賃貸収入が今のマンションのローン返済額や賃貸コストを下回る場合には、貯蓄が目減りしてしまう。
  • 今のマンションに対する固定資産税や火災保険料、管理費・修繕積立金などの支出が続く。
  • 賃貸管理に伴う支出(設備の修繕費、居室のクリーニング費など)が発生する。
  • 今のマンションの住宅ローンが残るので、新しい住宅を購入する場合、「返済負担率」の関係で住宅ローンが組みにくい。(「あなたが買えるマンションの値段は?」)

「売る」場合の売却金額は、近隣の不動産会社に査定を依頼し、売却に伴うコストも見積もってもらうとよいでしょう。売却金額を、購入金額等と比較することで売却に伴う損益を計算することができます。また、売却代金を住宅ローンの残債と比較をすると、繰上返済で住宅ローンが完済できるかどうかがわかります。

「貸す」場合も、家賃の相場は近隣の不動産会社が把握しているはずです。毎月の家賃で、住宅ローンの返済や、不動産会社の仲介手数料、管理費、修繕積立金などのコストがまかなえるかどうかの判断が必要です。