マンション暮らしというと、いろいろな世帯が同じ場所に住むことになるので「近所付き合いが煩わしいのではないか」と想像する人もいるかもしれませんね。特に都市部では「ご近所と積極的にかかわらずに暮らしたい」と考える人も多くいて、中には地域のコミュニティからある程度距離をとった暮らし方を望む人もいるようです。しかし近年、東日本大震災や高齢化社会などの影響で、コミュニティへの参加意識が高まってきているそうです。普段から、困り事や頼み事を相談し、いざというときに助け合える。そんな昔からあるご近所付き合いが、今改めて見直されてきているのかもしれません。

管理組合、ママ友、趣味の集い…マンションコミュニティのいろいろ

マンションにあるコミュニティは、大きく2つに分かれます。ひとつは、自治会や管理組合といったオフィシャルなコミュニティです。オフィシャルなコミュニティは複数の世帯が共同で生活するマンションならではの暮らしを、よりよくするために必要なものといえます。オフィシャルなコミュニティがよく機能していれば、災害などもしものときに安心ですね。

それとは別に、ママ友のようなお母さん同士の集まり、お子さんのスポーツや習い事を通じたつながり、お年寄り同士の親睦会など、ライフステージが近かったり、同じ趣味を持っていることでつながるコミュニティがあります。

このような自主的なコミュニティは楽しいマンションライフを送るのに役に立ちます。ある程度距離感を保つことはお互いのマナーとして大切ですが、家族ぐるみのお付き合いができたり、一緒に遊びに行ったりできる相手がすぐ近くにいる生活は楽しいものですよ。

内閣府の「社会意識に関する世論調査」によると、平成16年には36.7%だった「住民全ての間で困ったときに互いに助け合う」が、平成28年の調査では43.0%と上昇しています。このことから、地域社会全体で助け合う付き合い方を望む人が増えていることが分かります。しかし、現在の地域での付き合いの程度について平成16年の調査では「付き合っている」が71.7%でしたが、平成28年では67.8%まで減少しています。ご近所付き合いが大切なのは分かっているけど、うまくできていない人も増えているというのが全体的な傾向のようです。

やっぱりコミュニティは重要という考え方が増えてきたわけ

冒頭にも触れましたが、東日本大震災や高齢化社会などが背景になり、「マンションに暮らすのに、やっぱりコミュニティは重要」と考える人が多くなってきたようです。ここではマンションコミュニティがあることでどんなメリットがあるのか説明してみます。

災害時に助け合える

東日本大震災をきっかけにマンションコミュニティの重要性が一気に高まりました。あるマンションの管理組合の調査によれば、緊急連絡網(緊急時の連絡先を記入していただく書類)の震災前の回収率は約40%でしたが、現在はほぼ全員が記入しているとのことです。これまで、マンションは災害に対してハード面(建物)は強いがソフト面(コミュニティ)は弱いと言われてきました。しかし、震災を機に「災害時にコミュニティが機能するには、住民が普段からつながりを持っておくことが重要」と考える人が多くなってきたのでしょう。

犯罪を防ぐ効果がある

マンションの敷地内やエントランスで、住人同士が自然にあいさつを交わしたり立ち話をしているような所には、犯罪者も近づくのをためらうことでしょう。そのような所へ部外者が入れば、不審者に映る可能性が高いですよね。逆にセキュリティの高いマンションでも、住人同士が挨拶せず、お互いあまり関係を持ちたがらないような状態では、部外者が住人と一緒にエレベーターに乗り込んできても誰も違和感を感じないかもしれません。あいさつ程度の付き合いでも、コミュニケーションが成立しているマンションは、防犯力も高いと言えますね。

高齢化社会への対応も

マンションを終の棲家とする人が増えています。平成25年度マンション総合調査(国土交通省)からみた「マンションの居住と管理の現状」によると「マンションに永住するつもりである」と考える人は、昭和55年度には21.7%でしたが、平成25年度では52.4%と報告されています。これからのマンションは、シニア世代と現役世代が同居する場になっていくでしょう。
更にこの先高齢化が進めば、一人暮らしの高齢者も増えていくことでしょう。このような背景があり、シニア世代と現役世代が交流できるマンションコミュニティの重要性が見直されてきました。シニア世代にとっては様子を見てくれる存在は頼もしいはずですし、現役世代に多い共働き世帯にとっては通学路の見守りなど、お互いに有益なつながりに成り得るはずです。

子育てのバックアップ

前述の「高齢化社会への対応」に関連しますが、コミュニティを子育てに役立てる動きもあります。現役世代にとってシニア世代は、子育ての大先輩として大いに頼りになることでしょう。また、子供同士が友達や、クラスメイトということで、子育て世代同士でコミュニティができることもよくあります。このようなコミュニティでは幼稚園や学校の情報を共有できたり、仕事や用事で帰りが遅くなったときに子供をちょっと預かってもらえるなど、コミュニティのお陰でお互いが助け合うことができます。

気軽なご近所付き合いで安心・快適なマンションライフ

マンションに住むということは、多くの世帯と一緒に暮らすということです。「社会意識に関する世論調査」(平成28年)で、「地域と付き合っていない人」が32.1%いたことから分かるように、中には共同生活に煩わしさを感じる人もいるようです。しかし、これまでご案内してきたように、最近では、ご近所付き合いはいざという時に役に立つので、普段からお付き合いしておくことが大事だと考える人も増えているようです。コミュニティとの関わり方は人それぞれです。挨拶を交わす程度のお付き合いから、一緒に遊びに行けるような仲まで、お互い心地よく感じる距離感でお付き合いできるのが理想ですね。

多くの目で子供たちを見守ったり、困っているようであればすぐに声がけしたり、マンションライフは同じ場所に住むことで人と人とのつながりをより感じることができる暮らし方です。実際にやってみると、思っていたよりも負担が多くないことに気づくと思います。近所に住む人と支えあって生活する。そんなマンションでの暮らしを検討してみるのはいかがでしょうか。